世界の国々でどんなドーナツが食べられるかな?
海外よりの第一信続。1961年7月。
飛行機はビルの谷間を縫いながらも、心配していたよりずっと滑らかに着陸した。
途中、香港の夜景の素晴らしさは、言葉に尽せない。文字通り火の海を飛ぶ。
飛行機がこんなに遅れたにもかかわらず、迎えの車は待っていてくれた。
タクシーに乗るのは勿体ないし、バスはわからない。
「さてどうしようか」と心配していたところだったので、嬉しかった。
今晩のホテルは、一番安いホテルなので、出迎えはないものと思っていたのだ。
無愛想で人相の悪い白人の男が、にこりともせずに”You are too late”と言いながら、恩着せがましく、デコボコの汚い車に私を乗せ、バタンとドアを閉める。
夜は暗く、どこに拉致されるやら甚だ心もとなかったが、腹を決めてじっとしていたら、無事ホテルに着いた。
日本で「一番安いの」と予約した部屋だが、35香港ドル(当時2,100円)。
6畳程度の広さにシャワーは付いているが、ホテルの汚さの割には高い気がする。
ユニットクーラーは有難いが、その騒音たるや「ガーガーガタガタ」。尋常ではない。
「昼間は水が出ない」と掲示されている。水不足のため、断水らしい。
「お湯は出ますよ」と言うので「何故か」ときいたら、「タンクがあるから」との答え。
水がなくてお湯があるとはなんとも不思議だが、そんなことも世の中にはあり得るらしい。
「熱湯に注意してください」と注釈まで付く。
ホテルを出て1分。次の通りは繁華街。
夜中近いのに、人がいっぱい。
匂いは東京の下町に似ている。
醤油と油の匂いだろう。
二階建てのバスが走っている。
女の一人歩きが目立ち不気味。
人力車にしつこく追われたが、無事断わりおおせた。
何事も体験と、道端のパン屋に入る。
ショーウィンドーに並ぶデコレーションケーキは、日本よりひと回り大きい。大家族なのだろう。
身振り手振りでうまそうな揚げパンを三つ買い、早々に引き揚げた。
牛肉入り、豚肉入り、シナモンドーナツの三種類。
これで0.24香港ドル(当時15円)とは安い。